黒湯温泉と極上サウナ!ますの湯が創るデザイナーズ銭湯の新潮流
cocofuro ます の 湯の暖簾をくぐると、ほのかに甘い檜の香りと柔らかな間接照明が、都会の喧騒で強張った身体をふっと緩めてくれる。東急池上線の線路脇、かつてどこにでもあった下町の銭湯が、いまや全国のサウナーや風呂好きを惹きつけてやまない発信地へと変貌を遂げた。番台で迎えるスタッフの朗らかな声と、清潔感あふれるモダンクラシックな空間。一歩足を踏み入れた瞬間から、ここが単なる汗を流す場所ではないことが直感的に伝わってくる。
街の公衆浴場が後継者不足や設備の老朽化で姿を消していくなか、日常の延長線上に最高峰の癒やしを提示するcocofuro ます の 湯の存在は、日本の温浴カルチャーの未来を力強く照らし出している。ワンコイン強の手頃な入浴料で味わえる濃密な体験は、なぜこれほどまでに人々の心を掴むのか。その理由を紐解くべく、湯煙の向こう側にある緻密な仕掛けと現場の熱気に迫った。
廃業危機から奇跡の再生へ:COCOFURO再生プロジェクトの軌跡

昭和の面影を色濃く残していた旧「増の湯」が暖簾を下ろそうとしていたとき、救世主として名乗りを上げたのが株式会社楽久屋だった。同社が立ち上げた「COCOFURO再生プロジェクト」は、採算性の悪化や後継者不在に悩む銭湯を買い取り、または運営委託を受けて劇的なリノベーションを施す革新的な取り組みだ。
東京都浴場組合の傘下にある公衆浴場は、入浴料金が一律で定められている。料金を自由に値上げできないという厳しい事業環境のなかで、最新設備への投資をどう回収するのか。温浴業界全体が固唾をのんで見守るなか、彼らは「圧倒的な空間価値の向上」と「徹底したオペレーションの効率化」で答えを出した。地域の憩いの場としての役割を捨て去るのではなく、若年層や遠方からの来訪者を呼び込む新たなランドマークとして再定義したのだ。
今井健太郎が仕掛ける空間美学:モダンと伝統が溶け合うデザイナーズ銭湯

設計を手掛けたのは、数々の名作銭湯を世に送り出してきた建築家・今井健太郎氏である。コンパクトな敷地面積を逆手に取った空間構成は、まさに脱帽のひと言に尽きる。エントランスから脱衣所、浴室へと至る動線には一切の無駄がなく、視覚的な広がりを生み出すガラス使いと計算し尽くされたライティングが施されている。
浴室に足を踏み入れると、グレーを基調としたシックなタイルと木目のアクセントが調和し、まるで隠れ家ホテルのスパのような静謐さが漂う。従来の銭湯が持っていた「開放感」を、開放的な大空間ではなく「居心地の密度」によって再構築したデザイナーズ銭湯の金字塔。それがこの場所の第一印象を決定づけている。
大田区が誇る名湯:漆黒の天然黒湯温泉と冷水シャワーの衝撃

空間の美しさだけではない。COCOFURO ますの湯の最大の武器は、地下深くから汲み上げられる大田区名物の天然黒湯温泉だ。古生代の植物性プランクトンや海藻類が長い年月をかけて分解・濃縮されたフミン酸を豊富に含む湯は、コーヒーのように濃密な黒褐色をたたえている。
肌に触れた瞬間に感じるのは、とろりとした極上のぬめり感。湯上がりには肌がしっとりと潤い、「美肌の湯」と呼ばれる所以を肌身で実感できる。さらに圧巻なのが、黒湯の源泉をそのまま掛け流している冷水風呂だ。加温された熱い黒湯と、ひんやりと冷たい源泉黒湯を交互に行き来する温冷交代浴は、自律神経を刺激し、身体の芯から深いリフレッシュへと導いてくれる。
サウナイキタイでも絶賛のボナサウナと計算されたととのい導線
サウナ愛好家の集う情報サイト「サウナイキタイ」でも、常に上位の評価を維持しているのがこちらのサウナ設備だ。座面の下にヒーターが格納されたボナサウナを採用しており、熱源が直接見えないため室内はすっきりとしていて圧迫感がない。
適度な湿度管理が徹底されており、息苦しさを感じることなくじわじわと良質な汗が噴き出す。室内には静かにジャズやアンビエント音楽が流れ、自己との対話に没入できる環境が整えられている。サウナ室を出てから冷水シャワーを浴び、水風呂へと滑り込み、脱衣所併設のレストスペースで息を整えるまでの一連の動線は、一分の隙もないほど機能的だ。
【最新取材】混雑回避の黄金タイムと常連が教える至高の裏技
これほどの人気施設となれば、気になるのは混雑状況だろう。最新の取材と現地での利用動向調査から、快適に過ごすための明確なパターンが見えてきた。平日の夕方以降や休日の昼下がりはサウナ待ちが発生することもしばしばだが、狙い目は「平日の早朝6時から8時」および「21時半以降のレイトタイム」だ。特に朝風呂の時間帯は、近隣住民の落ち着いた利用がメインとなり、澄んだ空気のなかで贅沢な湯浴みを堪能できる。
また、知る人ぞ知る裏技としておすすめしたいのが「黒湯冷水シャワーと熱湯のクイックループ」。サウナを利用しない日であっても、42度前後に設定された主浴槽と源泉水風呂を2分・1分のペースで3セット繰り返すだけで、サウナ顔負けの鮮烈なととのい体験が得られる。ロビーでは厳選されたクラフトビールや生ビールが提供されており、湯上がりにグラスを傾けながら電車の通過音を聞くひとときは、何物にも代えがたい至福の時間となるはずだ。
久が原駅から始まる新しい日常:温浴カルチャーの未来を見据えて
東急池上線の久が原駅からわずか徒歩1分足らず。改札を出てすぐの場所に、これほど贅沢な日常の逃避場が存在すること自体がひとつの奇跡と言っていい。単なるレジャー施設ではなく、地域住民の健康を支えるインフラでありながら、外部のカルチャー層をも惹きつける磁場となっている。
銭湯が斜陽産業と呼ばれた時代は終わりを告げ、都市におけるサードプレイスとして再評価される時代が訪れた。伝統をリスペクトしながら現代のライフスタイルに合わせて鮮やかに再解釈してみせたこの場所は、これからも湯を愛するすべての人々を温かく包み込み、心身を解きほぐし続けるに違いない。 (出典: cocofuro ます の 湯(Yahoo!ニュース))